【読書】ウォルマートの成功哲学~企業カルチャーの力~

読書

おはようございます!今日はマックではなく家で更新します。
私もあと数日で、転職と個人事業主デビューか・・・なので、今日は有休ですね。嫁とこどもを保育園に送らないといけないので、ちまちま家でやっておきます。

さて、今日ご紹介するのは『ウォルマートの成功哲学』です。文字数にして35000字。
これ、メモする量じゃないですよね、やっているとですね、どこをメモすればいいかわからなくなってしまうんですよね。
さらにいうと、読み返すのめんどくさいくらいの量です。
でも、大変だったし、いい内容がたくさん詰まっていたのでぜひ皆さんにも、目を通してもらいたい!そんな思いでアップしました、よろしくお願いいたします!m(__)m

ちなみに、最近知ったのですが、ウォルマートにいってみたいな~って思って検索したら、SEIYUが2008年にウォルマートの完全子会社化されてたんですね、、全く知らなかった・・・
だから品ぞろえとかいいんだ、商品が探しやすいんだ、っておもいました。
この本の内容を踏まえてSEIYUに行けば、本と実物でさらに理解が深まるかもしれませんね!

ウォルマートの成功哲学
【第1の原則】
成功を収める事業の原点には常に夢がある。夢の実現には確固たる意志、情熱、そして成長を追求する進取の気性が必要である。
【第2の原則】
ビジョンを持て。ビジョンを持つことでより大きくより賢くより強くなった将来の自分を見ることができる。ただしその際に、現在の自分の姿や行動から決して目をそらしてはならない。
【第3の原則】
偉大な企業を築くためには、誰もが同じ価値観、目的、そして期待される成功イメージを共有できるような企業カルチャーの創出が不可欠である。
【第4の原則】
真の成功とは、組織がそのメンバーを尊重し、尊厳ある存在として扱い、彼らの可能性を信じて一人一人の成長を促す努力を積み重ねた結果、その努力に比例して得られるものである。
【第5の原則】
お客様の成功に役立つことを第一に考えよ。お客様を第一に考える姿勢を徹底することが、自分自身の成功への一番の近道だ。
【第6の原則】
高い期待を示しつつ、謙虚に過ちを認めてそれを正し、将来を楽観しながらも、絶えず自己満足を戒めることで卓越した成果を生み出すことが可能になる。
【第7の原則】
成功の大きさは計画し監督し、最終的にビジネスのすべての段階でやるべきことを実行する能力と正比例する。
【第8の原則】
偉大な企業を築くためには、人のう役に立ち、組織全体の目標実現を促進するような様々なツールや仕組みを絶えず積極的に探し求め、その効果を評価し、それらへの投資を進めなければならない。
【第9の原則】
最も基本的な業務活動の中にこそ、さらなる改善、成長、コスト削減などにつながる大きなちゃんすがあるものだ。当たり前のことを決して見過ごしてはならない。
【第10の原則】
相互の信頼とオープンコミュニケーションに基づき、ビジネスパートナーとの間で双方に有利なウィンウィンの関係を構築せよ。そうすれば成長の可能性を最大限引き出すことができる。
【第11の原則】
組織の持続的な成功の大きさは、成長を追求しつづけるひたむきな姿勢に比例するものである。
【第12の原則】
組織の中に、慈善寄付と地域貢献の精神を吹き込もう。それによってチーム全体の雰囲気が大きく変わるだけではなく、膨大な有形無形のリターンを得ることができる。

■序 ウォルマートの成功哲学
「成功に秘訣などない!それは周到な準備、不断の努力、失敗からの学習の結果である」

ウォルマートはある夫婦が自ら貯めた6000ドルと家族から借りた資金をつぎ込んで始めた小さな事業であり、55年後に世界最大の企業に成長した。

‐何か秘密があるのか?
ウォルマートはどんなやり方をしてきたのか?謙虚にいって秘密や魔法なやり方はない。きわめて明快であり、単純な心理は優れた洞察力ととらわれない開かれた心で読んでいかなければ、その本質を理解できない。
ウォルマートの歩みは決して容易ではなかった。ウォルマートの成長は、ひとえに多くの優秀で勤勉な人々が長年にわたって努力を積み重ねてきた結果なのである。

ヘンリーフォード
”何よりもまず、準備を怠らないことが成功の最大の秘訣”

‐ではどんなやり方をしてきたのか?
私たちの成功を何か一つの理由だけで語るのは難しい。それは数多くの取り組みが重なり複合的に合わさった結果である。

ウォルマートが成功した主なポイント
①サムウォルトンが自分の店を持ちたいという夢を抱き、その実現に向けて神聖な義務感を感じ自分自身を律し、成長させることを追求したこと。
=夢の追求と自身の成長

②ウォルマートは自分たちのあるべき姿に関する大胆なビジョンのもとにつくられた企業である。そのビジョンは「他者への奉仕」である。
どのような課題や困難にあたっても、「お客様のために尽くす」という当初のビジョンから道を外すことはなかった。
=お客様・他者主義

③ウォルマートは従業員への姿勢をかたくなに実践した。高い給与水準、自社持ち株、福利厚生、昇進の推奨。すべての従業員が尊厳ある存在として処遇されている。職位の上下に関係なく一人の人間が会社にとって不可欠だと表している。数多くのアソシエイト(従業員)から生み出されている。
=従業員への敬意と承認

④ウォルマートは基本的な価値観や信条を核にして、独自の企業カルチャーを創造し、維持してきた。ウォルマートの成功を収めた最も重要な要素は、企業カルチャーであることだと考える。さらにその先のリーダーを見据えて残していきたいと思っている。
=企業文化の永続

⑤すべてのアソシエイトによるお客様満足度の向上と期待値超え。お客様に気持ちよく挨拶し、すべての商品を品切れなく、毎日低価格で提供を実践。
=お客様満足度120%

⑥いかなる業務分野においても優れた成果を目指して情熱を取り組むとされている。常に物事をよくしよう、そして可能な範囲で最高を目指そうと斗力している。変化を恐れずむしろ果敢にチャレンジする。うまく機能しているものであっても改良・改善を繰り返す。
=情熱と変化への執念

⑦ウォルマートはやればできるという実行力に支えられている。これにより記録的な速さと正確さでやるべきことを実行し、目的を達することが可能になる。企業にいくら素晴らしいビジョンや商品があっても、そこで働く人々がビジョンを実行に移し求める人に商品を届けなくては何にもならない。やるべきことは細部までやり、役職者は最前線で起きていることを適切な方法で細かいところまで把握しておく責任がある。
=秒速の実行力は成功や目的達成のカギとなる

⑧ウォルマートはではお客様の満足度向上に多大なる設備投資をしてきた。テクノロジーの強さがウォルマートの競争優位性の一つになった。
=顧客のためのテクノロジー

⑨最高を目指す中での基本的な部分の改善にとりくんできた。物流コストの無駄を省くことで、私たちは小売業のサプライチェーンマネジメントに革命的な変化を起こしたのである。

⑩ウォルマートは、何事も隠し立てせず、公明性と信頼を基本にしてサプライヤー企業との関係を築いてきた。ビジネスは様々な人々との関係性に支えられている。従業員、お客様、サプライヤー企業、株主、取締役メンバー、地域社会の人々など。こうした関係を維持するには最高レベルの誠実さと素直さが必要不可欠である。信頼関係の構築こそが、長期的な忠誠を獲得する上で最も大切な基本であり、それが全員で成功を分かち合える風土を生み出す。
=世界最高レベルの誠実さと素直さと信頼関係

⑪ウォルマートは慎重に組み立てられた成長戦略を粘り強く実行してきた。利益の多くを新たの市場への拡大と既存店舗や物流センターの更新投資に積極的に振り向けてきた。
=計画的な成長戦略の実行

⑫ウォルマートは早くから企業としての責任を果たすことに力を注いできた。事業活動を行う地域社会やお客様への貢献を重要な役割だと考えている。私たちは褒めてもらいたわけではない、マスコミに取り上げてほしいわけでもない、純粋に地域社会への成長、幸福、繁栄を実現するために役にたちたいのである。
=企業責任とステークホルダーへの純粋な貢献思考

私たちはただ勤勉に働くだけでなく、仕事を大いに楽しむように心がけてきた。仕事と楽しさを両立できないなんて考えたことない。
私たちは誰とでも肩ひじ張らない心地よい付き合いをしてきたし、楽しく心躍るような環境づくりはすべてやった。全員が前向きに仕事ができる雰囲気を提案してきたのである。

ベンジャミンディズレーリ
”人生の最高の秘訣は来るべきチャンスに対して常に備えを怠らないことである”

■第1章 果てしなく広がる夢

メルヴィンパワーズ
「並外れた人物とは、ごく普通の人がより大きな次元で、そしてより実りある領域において、成功に想い馳せ、成功を夢見て歩み続けた結果の産物である」

一人の男には夢があり、夢は至って単純で、自分の店を持ちたかった。しかし誰もが思いつくようなありふれた単純なものでもなかった。
なぜなら、彼にはそもそもなぜ自分が店をもちたいのか、店を持ったらどういう風に経営していくのか、という点について固い信念があったからである。彼の夢は次の基本的欲求から生み出されたともいえる。
・ほかの人々のためにもっと貢献したい
・強い組織をつくりたい
・やりがいを感じて一生懸命働きたい
・ほかの人々の暮らしに良い営業を与えたい
・楽しく仕事をしたい
・自分の家族を助けたい
・神の栄光のために尽くしたい

男の夢に人並外れたところがあったとすれば、それは彼が精いっぱい学び自ら成長し、そして一生のうちにできることをすべて成し遂げるという固い覚悟のもとに、日夜その夢を大切に育んできたことだろう。結果として想像を超えるレベルにまで大きく成長していった。

男の名前は” サムウォルトン ” 

彼の夢は、次のようにして徐々に具体化していった。
・小さな雑貨店を取得し自分の店にする
・毎日懸命に働き続ける
・行く先々で人を楽しませて興奮を巻き起こす
・多くの人々の暮らしに営業を及ぼす
・一緒に働く人々の待遇を改善する
・家庭では良き夫、良き父親になる
・売り上げが増え利益が大きくなる

‐第一の回り道「すべての道はベントンビルに通ずる」
サムは最初の店の借地権を失った時でもあきらめていなかった。むしろ成功することへの喜びを知っていて、自分なら必ずできると考えていた。新しい店舗をアーカンソー州ベントンビルという名の町に開くことにした。彼は絶えず、従業員、競合他社、お客様に話しかけ、ビジネスのやりかたを改善していった。サムはいつも夢を見据えていた。今後、店舗を増やすと考えたときに、自分一人では限界があり、一生懸命変わらずに働くが、優秀な人を雇い、人を育て仕事を任せていきたい、と弟のバドに店を手伝ってほしいと相談した。

‐第二の回り道 「ウォルマートの誕生」
1962年までにはサムとバドは休みなく働き15店舗に増やしていった。
彼らはベンフランクリン社の最大のフランチャイジーになった。
それでもあぐらをかいているサムではく、競合他社の動きに注意をはらっていた。競合店が店の規模を大きくしているのを見て、自分たちの店も大きくする必要があると決めた。お客様はこの店に希望の商品がなく、買いたい商品を買うためにわざわざ車でほかの店まで行かなくてはならい。お客様満足のために計画を練り直し品ぞろえをよくするために店を大きくしようと考えた。フランチャイズもとのベンフランクリン社に何度も掛け合ったが断わられた。しかしあきらめずに根本的なやり方を変えることを覚悟した。

‐果てしなく広がる夢
サムはあきらめずに進むことを選択した結果、自らコンピューター、倉庫、トラック、などの多くの品々を新たに購入することになった。
それはついに「ウォルマート」が誕生することを意味していた。
商売のやり方を変えるのには大きなリスクがあり、大きな勇気と前例にとらわれない気持ちが必要だった。サムとアソシエイトたちはこうした挑戦に果敢に立ち向かっていった。そして「ウォルマート」という店が成功をおさめながら一軒ずつ増えていった。

サムはこれまでと変わりなく、店舗で働くアソシエイトと関わり続け、地域や教会の活動にも積極的に参加し続けた。彼はごく普通の人間であり続け、自分が成し遂げたことであっても、すべての人の手柄にするのが常だった。一方で彼は現状に満足することを許さず、絶えず新たな課題を見つけ、自ら考えを巡らせ、実験し、目標レベルを引き上げ、不可能と思われることを実現していった。
サムは一貫してリーダーであると同時にサーバント(奉仕者)であり生徒であると同時に先生であり伝道してあり批判者でもありチーム監督でもある。

アソシエイトあてのメッセージ
” 私は、ウォルマート創設当時、どれだけの規模の会社をつくろうなどという明確なビジョンはもっていなかった。ただ懸命に働きお客様の役に立つ仕事をしていれば私たちの成長には限界はないだろうと固く信じていた。私はこの仕事を通じて、多くの人々の人生に密接にかかわってきた。皆が私のことを良き友人として、そして少しでも皆のためになる仕事をしてきた人物として、記憶にとどめてくれたらありがたい。私はこの会社で一緒に働く仲間たちに対して人一倍強い思いを抱いている。皆は私にとって本当に特別な存在なのだ。 ”

ブルースバートン
「人は大きな変化を経験することにより成長する」

‐もし今、サムが生きていたら
サムが生きていた時代も世の中は多くの変化に満ちていた。むしろそうした大きな変化を、人々の先頭に引っ張っていたのがサム本人である。
「大切なものはしっかり守れ、しかし変えるべきものは変えていけ、変化は常にやってくる、変化のど真ん中にたって大きな力を発揮していこう」

リエンジニアリング革命の著者 ジェームズチャンピー
” リーダーに必要なのはビジョンを持っているだけでなく、他のメンバーをひきつけ、新しい理想やお客様の本当のニーズを実現していくという目的に向けて、全員が努力し傾注するようにしなければならない。さらに一歩進み、一人一人のメンバーがリーダーになっていき、一人ひとりが目的を見出し、変革の必要性を周囲に広める役割を担う必要がある ”

サムの功績はなんといっても、人を大切にし勤勉に働く事を重んじてウォルマートの成功の哲学を確立したことだろう。

■第2章 ビジョン~ほかの人には見えない ものを見る力
ビジョンをもて。ビジョンを持つことでより大きく、より賢く、より強くなった将来の自分をみることができる。ただしその際、現在の自分の姿や行動から決して目をそらしてはならない。

セント=ジェルジ・アルベルト
「発見とは、誰もが見ているものを見ながら、誰も思いつかなかったことを思いつくことである」

ビジョンとは、明日をどのような日にしたいのか、別の言い方をすれば明日の自分はどのような姿でありたいのか思い描くことである。
あなた自身はどうか?個人としてのビジョンや企業としてのびじょんを策定してそれを仲間と共有することにどれだけの時間とエネルギーを割いてきただろうか?

‐サムウォルトンが掲げた素朴なビジョン
サムウォルトンのビジョンは同時代の事業家と比べても壮大でもなければ洗練されているわけでも、人並み外れた野心的なものでもなかった。
以前として彼の成功を多くの専門家は幸運の結果だと考え、ビジョン実現に向けた辛抱強い努力の存在はあまり注目されていない。

サムはもともと小さな町に住む人々に少しでも良い買い物の機会を提供したいと考えていた。
サムは献身的に働く人を集めて良いチームをつくり、彼らと一緒にこのビジョンを達成したいと考えた。だからこそサムは採用面接の際に、まずその人の笑顔をよく観察していた。
彼はチームメンバーがお互いに家族の一員であるように感じられれば彼のビジョンの実現が、皆にとっての喜びと成功につながると固く信じていたのだった。サムは優秀なビジネスマンだったので自分たちの店が成功すれば、ビジョンに沿って会社は成長し、多くのお客様に巡り合うことができることを理解していた。

リーダーとして人から支持されたいと考えるのであれば知っておくことがある。それは、多くの場合、人間は単なる金銭的な目的ではなく、それ自体に意義を感じることができる何かと、より深いレベルでかかわっていたいという傾向があることだ。

‐ビジョンの成長
ビジョンとはうたい文句よりもはるかに重い意味のあるものだ。一言で言えば、それはその人は組織の存在理由を表すものである。

・ビジョンは、リーダーの情熱的な意思の産物でなければならない。
・ビジョンはリーダーが下す、あらゆる意思決定に影響を及ぼす。
・ビジョンはその達成に困難や大きなtyレンジを伴いながらも、達成可能と考えられるものでなければならない。
・ビジョンはチームのメンバーがそれを達成することにやりがいを感じられるような心躍るものでなければならない

ウォーレンベニス(米国のリーダーシップ研究科)
リーダーシップとは、ビジョンを現実に転換する能力のことである。

‐身の回りにある重大事を見抜くビジョン
ビジョンに関する話は時として、現実離れしたものになりがちである。
明日の成功のために今日何をするか考えよ。と言われるとなんだが脅かされているように感じる人もいるだろう。
優れたリーダーは将来を見通し、マクロビジョンの説明と今、皆の前で起きている小さなこと、小さいがゆえに気づかないことを見逃さない観察眼を持っている。

例えば
サムと競合店を訪れたとき、私は空き箱が通路においてある、清掃ができてないなどの悪い点ばかり見てしまっていたが、サムは違った。売り場ひとつ一つをしっかりと自店と比較し、いいところは盗み、自分たちにとって勉強になることや参考にして改善すべき点、またその物品の製造元をメモして回っていたのである。

■第3章 企業カルチャーの力
偉大な企業を築くためには、誰もが同じ価値観、目的、そして期待される成功イメージを共有できるような企業カルチャーの創出が不可欠である。

「偉大な組織とは、どれも一人の人物の姿の投影図である。その人の人格が組織全体の性質を決定する」

競合他社と比較したウォルマートの強みはなんだろう?
大体の人は「エブリデーロープライス」というがそう決めてしまうのは早計だ。

過去に米国連邦政府の保険教育福祉長官を務めた
ジョンガードナーがカルチャーの本質について独自の見解を語った。
「偉大な文明とは、人間集団の精神の中で生起するドラマである。それは、構成員の間で共有されるビジョン、価値観、目的意識、および将来への期待によって支えられている。健全で適切な一体感を有する人間集団においては、その構成員の間に正しいこと、良きことなどに関する共通の見方、考え方が生まれてくるものである。」

共有されたビジョン、共有された価値観、共有された目的意識、共有されたものの見方。。このように「共有された」という言葉がすべてのカギを握っている。リーダーの最も大切な役割は、まさにこうした状況を作り上げることにある。組織にとって本当に重要なことを、ほかのメンバーに理解させるために、それを示すストーリの語り部となり、それに明確な形を与え、それを日々実践し体現することこそ、リーダーの責任なのだ。

偉大な組織と言われるリーダーには、言葉や行動が組織が重んじていることを見事体現しており、結果としてほかのメンバーも認識を共有し一体感をもって行動できるようになるのだ。

私はウォルマートの成功の最大の要因は何百人もの従業員の間にある共通の基盤を築き上げることに傾注してきたことにあると考える。ウォルマートは独自の企業カルチャーを維持・強化することに最大限の努力をしている。
あなたの企業カルチャーは、今どのような状態だろうか?企業カルチャーとはリーダーが意図的に築き上げるべきものだ。さもなければあなたの会社の従業員たちがあなたにお構いなしに自分たちのカルチャーをつくり上げてしまうであろう。

‐カルチャーとは何か?
カルチャーとは組織の人格のようなものである。組織のメンバーがどのように思考し、行動し、他者と交わり、日々仕事をするかは多くの場合その組織のカルチャーによって想定される。したがって、組織の継続的な成功の可否、将来に向けた方向性などを決定する上で、カルチャーは極めて強力な役割を果たす。企業の未来はカルチャーによって決まると言っても過言ではない。

‐やればできるという姿勢に基づく、ウォルマートの企業カルチャー
物事に取り組む姿勢はカルチャーの大きな構成要素であり、カルチャーを創出していくうえでも力を発揮する。自分の人生観について自問してみれば、自らの生きる姿勢をうかがい知ることができるだろう。
それは、さまざまな問題や困難を伴う状況を想定して自問してみることで、一生明らかになるだろう。

あなたは何らかの問題に出くわしたら場合、解決できると信じて取り組むだろうか?危機的な状況にどう対処するだろうか?目の前の問題を成功を邪魔するもとのみるだろうか?それとも更なる改善の好機ととらえるだろうか?こうした問にあなたがどう答えるかが、あなた自身の基本的な姿勢を示している。

リーダー自身が物事に取り組む姿勢は、リーダーの仕事の仕方やメンバーに対する態度に影響を及ぼし、最終的には組織全体の成功を左右する。リーダーの行動次第では、メンバーたちは不可能なことなどないという確信を固めていく。
ウォルマートの企業カルチャーは「やればできる」という「前向きな姿勢を起点にしている。ウォルマートの店頭でグリーターと呼ばれるアソシエイトがお客様に積極的に挨拶や声がけをするのもこうした姿勢に基づくものだ。
ウォルマートのすべてのアソシエイトは、アメリカの小さな町の電手王的な価値観を尊重し、仕事を楽しみながらビジネスで直面するいかなる困難にも耐えることができると信じている。
だからこそウォルマートのシンボルは電手王気に幸福な笑顔を象徴するマークが使われてきた。
ウォルマートでは常に他社との競争を健全でよいことだと考えるようにしている。それによってもっと良くなるはずだからである。

‐サムの残した企業カルチャー
1992年にサムは永眠した。当時多くのアナリストがサムから次世代のリーダーへの移行の過程で、ウォルマートは普通の会社に成り下がり過去の成功のオーラも次第に色あせていくだろうと予測していた。しかし、サムは一代で偉大な会社を作っただけでなく、人を育て、自身を植え付け、思想や信条の体系を打ち立て、その結果、永続可能な企業カルチャーを確立したことを今こそ、世の中に示す時だという思いが。カルチャーこそが組織の成功を考える上でもきわめて重要な要素なのだ。カルチャーは組織能力の代替機能ではない。そうではなくカルチャーが根付いていれば、組織能力に継続的に生命力が吹き込まれ、組織としてもつ可能性を最大限に開花させることが可能になるのである。

‐企業カルチャーの起点としての価値観
ウォルマートカルチャーは、私たちの価値観、すなわち本質的に良いと信じて守り続けていることを起点にして成り立っている。
価値観とは、結局その人が何を支持し、何をありどころにして生きているかを示すものだ。価値観こそがカルチャーの根幹に位置している。
価値観とは、いかなる場合においても妥協することを許さない、その人または組織にとっての基本原則を示しているからだ。いかなる組織においても、その組織固有の価値観を明確に示し、皆がそれをりかいできるようにしておくことが、何にもまして重要なのである。

【ウォルマートの根本的価値観】
・誠実
・個人の尊重
・チームワーク
・コミュニケーション
・卓越性の追求
・自己責任
・信頼

ウォルマートでは、誠実さに反する行為は一切許容されない。嘘をついたり、人をだましたり、何かを盗んだりすることは本来的に悪い行いである。そういった行為に対しては、厳しい処分の可能性を含めている。

個人の尊重とは、すべてのアソシエイトがその役職、肩書、性別、人種、宗教や進行などの違いにかかわらず敬意をもって受けれなければならない。あるアソシエイトがその上司に反対意見を述べたとしてもその人の意見は会社全体にとって大切なものである。

チームワークが大切なのは、誰も一人だけで成果を上げることができないからだ。助けてもらうだけではなく、ほかのメンバーからも頼りにされる存在にならなけれなならない。

コミュニケーションは会社の中のすべての階層において必要不可欠である。
この場合のコミュニケーションは、双方向てきなコミュニケーション、すなわちダイアローグでなければならない。話すことだけでなく、相手の話に耳を傾けることが求めれられる。
卓越性の追求とは、常に少しでも良い成果につながるようにと改善を続けることである。信頼とはあらゆる人間関係の基本である。

‐行為はその人の信条を移す鏡
ウォルマートの優れている点は、不動産開発戦略、エブリデーロープライスの価格戦略、商品の品ぞろえ、人材育成プログラム、事業戦略に関するいくつもの事項がかかれていたが、本当の原動力は別のところにある。
価値観と信条は両方が相まって会社の中での人々の思考と行動パターンを決定づける。ウォルマートの社員に三つの信条をあげてくださいといえば、
次の言葉が返ってくるはずだ。
・私たちはすべての人を尊重します。
・私たちは、お客様のために尽くします。
・私たちは常に最高を目指します。

非常にシンプルだが、すべてのアソシエイトがこれらの意味するところをしっかりと理解して毎日の仕事の中で実践するように努めているのである。

ガンジー インドの独立指導者
「原則はあくまで原則である。いかなる場合であれ、その実践が困難であることを理由にして、原則を曲げることは許されない。我々は、原則を貫徹するための努力を惜しんではならない。強い意志に裏付けられた壮絶な努力が必要なのだ」

‐三つの信条
●すべての人を尊重する
すべての人を尊重し、一人ひとりを尊厳ある存在として扱う。これは、あらゆる人を対象にした考え方である。ウォルマート社員では従業員とは呼ばずに、仲間たちという意味でアソシエイトと呼んでいる。アソシエイトは単純作業をするための道具ではない、新しいアイデアの源泉である。ウォルマートの新しい取り組みの大部分はアソシエイトからの提案である。

●お客様のために尽くす
私たちはお客様を本当に大切な人として考えている。お客様こそ、本当のボスである。すべてのお客様が心から歓迎されていると感じ、家族的な雰囲気を感じてもらえるように努力している。したがって、私たちが日ごろから取り組んでいる多くのことは、お客様中心の考え方に基づいている。

●常に最高をめざす
常に最高をめざすは、決して現状に満足せず、絶えず改善を続けることだ。
改善のためなら、今までやってきたことをすべて変更することも、いとわない。もうこれでゴールに到着したなど絶対に考えない。
自己満足に陥ったり得意になって舞い上がったりすることもない。どうしたらもっと良い成果がだせたのかを話し合う。何事においても常に最高を目指して努力すれば並外れた結果を出すことができると、皆で信じている。

‐企業カルチャーを共有する

会社としての基本的な価値観と信条を明確にしたら、次に、これらにどのように生命力を吹き込み、実際に根付かせていくかを考える。
まずは価値観や信条について、社内で日ごろから繰り返し話し合うように習慣づけることである。ウォルマートでは一人ひとりが価値観と信条を体得してくれるように努めている。
フライデーモーニングやサタデーモーニングのミーティングを活用し、全社員、幹部、役員に伝えるための大切な機会がある。
本部で四半期ごとに開かれるアソシエイト集会では、企業カルチャーの重要なポイントについて、繰り返し話し合う。

定期的に社員を集めてミーティングする会社はいくつもある。問題は、その中で企業カルチャーにどれだけ高い優先順位を置いて話をするようにしているか?である。

ウォルマートの株主総会では、株主だけではなく全世界にあるウォルマート店舗から選出されたアソシエイトも出席し、会社全体の改善すべき点について、意見やアイデアを交換し合う。優れた意見はすぐに採用され、全部門で実施される。そして株主総会に出席したアソシエイトは自店に帰りほかのアソシエイトに共有する機会が与えられる。
自分たちは会社やその企業カルチャーを学ぶだけでなく、実際にそれを体感し、伝承していくのである。
店長や地区マネージャーは、日々の営業の最前線にたって、絶えずお客様と接している。彼らに会社全体の方向性をいち早く知らせることで、彼らが常に仕事の中で企業カルチャーを徹底的に実践し、会社に大きな希望を持ってくれるようにすることが、何にも増して重要なのである。
だから私たちは、最前線のマネージャーたちとじかに会って話をする機会を、できるだけ多く設けるように努めている。

年2回の大規模な集会は、商品部門の各部が大掛かりな商品ディスプレーを並べ、バイヤーが注力すべき商品に関するセミナーを開催し、それぞれの担当部署から今後の取り組みに関するセミナーが行われる。
全体セッションでは、外部講師によるリーダーシップに関する講話に加え、経営メンバーから業績動向や今後の経営方針などについてのプレゼンテーションがおこなわれる。参加者全員の意欲を掻き立てるだけでなく、企業カルチャーの要素がすべてのプログラムの中に織り込まれている。そのほかに、四半期に一度、経営層が社内のテレビスタジオから、各店の休憩室に設置されたモニターをとおして自然体でユーモアを交えながら企業の基本姿勢やカルチャーを感じてもらえるように工夫している。

‐新しい市場で企業カルチャーを共有する
ウォルマートでは、新しい店舗や物流センターを開設する際には、次のような点を注意して進めるようにしている。

①適格な人を選んで店長に任命する
②経験豊富なチームを編成して店長を補佐する体制をつくる
③仕事の中身に相応しい、適切な人材を採用する
④新規採用者のトレーニングの一環として、各人の期待を説明する
⑤開業準備作業をおもいきり楽しむ
⑥一日目から具体的な行動を通じて、あるべき企業カルチャーの手本を示す
⑦とにかく一生懸命仕事をする

ウォルマートでは外部から採用した人をいきなり店長に任命することはない。新しいお店の店長に選ばれるのは、この会社に長く勤めて、能力があり、ほかの人への配慮が行き届き、ウォルマートの企業カルチャーを十分理解してそれを仕事の中で体現できると認められた人だけである。

新しいお店のオープンを支援する体制の一部として必要不可欠なのが、「ストアプランニング」と呼ばれる、献身的で熱にあふれる、新店開設のための専門家たちの集団だ。開業した店舗を軌道に乗せることだけでなく、新入アソシエイトに価値観やカルチャーが無理なく定着するようにする。

どんな会社も、採用基準に、能力があって、明るくて、積極的で、協調性の高い人をとりたがる。
しかし、ウォルマートは違う。
新しく採用するアソシエイト選ぶ基準は、「幸福感のある人物を採用しよう」といっている。なぜか?ウォルマートの企業カルチャーは前向きで積極的な姿勢を特徴としている。こうした姿勢は天性のものをもっている人を採用する方が、一から作り出すよりもはるかに簡単である。

開業準備のプロセスを通じて、店舗のマネジメントチームとストアプランニングのメンバーたちは日々、私たちの企業カルチャーをみずから行動で示していく。私たちは店舗のマネジメントチームとストアプランニングのメンバーたちに絶大な信頼を寄せている。企業カルチャーを広めていくうえで、彼らの果たす役割は非常に大きい。

‐カルチャーが組織の失敗につながる時

2003年のスペースシャトルコロンビア号が大気圏で空中分解した事故についてNASAの調査委員会は事故原因について報告書のなかで次のように述べた。

” 我々は、発泡断熱材の損傷に関する問題と並んで、NASAの組織カルチャーの問題がこの事故の発生に深く関与していると考える。祖域カルチャーとは、ある人間集団の機能や行動を特徴づける、基本的な価値観、規範意識、信念、習慣などのことを指す。組織のメンバーの様々な家庭や前提条件などは、本質的にその組織のカルチャーによって規定されている。組織カルチャーは組織内に強い影響力を振るい、組織の再編や主要メンバーの異動などを通じてさらに維持強化されていく。組織カルチャーは、組織に対して、プラスの効果をもたらすこともあれば、マイナスの影響を及ぼす可能性もある ”

NASAは人類を月に送ることに成功した世界唯一の組織であり、きわめてユニークな伝説的な存在である。このような輝かしい組織の組織カルチャーがどのようにこの悲惨な事故に関係があるのか。
単純ながら極めて根深い血管が、NASAの中では、長い年月をかけて蝕んでいった。
暗黙のルールとして、自分の上司に悪いニュースを知らせることを嫌うようになったのだ。そうすること自体が後ろ向きのことだと考えられていた。カルチャーは組織の内部にまかれる種のようなもので、成功につながることもあれば、失敗につながる場合もあるということを、知っておくべきだろう。

‐本物のリーダーよ 立ち上がれ!
強力で意義のある企業カルチャーを維持、浸透させるためのカギは強いリーダーシップにある。過去に何人も価値観に賛同できずに会社を去っていったひともいたが、彼らはウォルマートの企業カルチャーに合わなかったのだ。こうした人は自分に合うカルチャーの会社を見つけたほうがいいに決まっている。
自社の標ぼうする価値観について、社員てちょいうに書いているだけで、あとはどこにも書いていないし、口頭での説明も一切ないという会社が多い。何回でも思い返してもらうようにしなければ、会社の掲げる価値観を社員が実践できるはずがない。自らの企業カルチャーを軽視し続けていれば、そのうち組織全体が機能不全に陥ることだろう。企業カルチャーは絶えず活性化させながら維持させていくべきであり、それはリーダーの責任である。

‐企業カルチャーを持続させる

ジョンガードナー
「価値観というものは年月とともに劣化していくものである。社会集団がその価値観を健全に維持するためには、価値観の劣化のプロセスを避けて通るのではなく、価値観自体を力強く再生し活性化するよう努めなければならない」

価値観が劣化する理由は、自己中心的な欲望や考え方、成功体験により、自分の欲求やニーズ、関心ごとにのみとらわれる傾向を強め、他者をおもいやる気持ちを忘却していく。悲しむべきことに往々にして、他者への思いを忘却したとき、人は自らの本来の価値観からも乖離していく。
これは、企業社会でも同じである。
成功を収めると、人は偉大な業績をあげたことを、自分自身の才能と知恵によるものだと考えるようになる。成功にまで導いてくれた価値観の体系などは、もう無関係であり、あまり重要でもないように思われてくる。

「失敗よりも危ないことは、成功である」

人はあまりに簡単に自己満足に陥り、自分だけを頼りにするようになり、そして傲慢になる。
だからこそ、価値観を劣化させないために、再発見のプロセスを手助けするために、健全な価値観を発見できるようにリーダーの仕事がある。

●リーダーが絶対に行うべき三つのこと
活力に満ちた、意義深い企業カルチャーを築くためには、強力なリーダーシップが不可欠である。企業カルチャーを築きそれを維持することは、リーダの極めて重要な役割であり、権限移譲をできるものではない。

①リーダー自身が、企業カルチャーにゆるぎない確信を抱いていること。
②リーダー自身が、言行を一致させて他のメンバーにお手本をみせること。
③リーダー自身が企業にとっての価値観を理解し、それを仕事の中でどのよに具体的に実践するべきか、メンバーに対して示しつづけること。

‐組織の「黄金律」
サムはこのウォルマートをつくるにあたって、聖書にしるされているユダヤ・キリスト教の原理に基礎をおいていたことは確かだ。ウォルマートでは、プロテスタント、カトリック、ユダヤ教徒、仏教徒、ヒンズー教徒、イスラム教徒など多様な宗教的バックグラウンドを持つ人々が働いている。宗教上の背景に関わらず、各人がどのように行動するべきか、そして各人がどのように処遇されるべきかの基準が組織の黄金律になっている。

サムには、ビジネスの世界の並みの期待を上回り、自らの夢を実現できるような会社を率いていくためには、自らが目標を高く掲げなければならないという覚悟があった。だから彼は、個人の生活の中でも常に高い基準を設定するようにしていたのだ。

■第4章 人こそが価値を生み出す
真の成功とは、組織がそのメンバーを尊重し、尊厳ある存在として扱い、彼らの可能性を信じて一人一人の成長を促す努力を積み重ねた結果、その努力に比例して得られるものである。

ハーベイファイヤーストン
「リーダーが受ける最高の賛辞とは、自らの部下から受ける賛辞である、他者の成長を実現することなしには、持続的な成功は望めない」

ウォルマートの成功の哲学は、店舗や事業計画ではなく、テーマは人である。長年にわたってウォルマートの成長を支えてきたサムウォルトンをはじめとする経営メンバーの面々だけでなく、会社とお客様のために誠心誠意の努力を続けている本部、および店舗のミドルマネージャーや一人一人のアソシエイトが主役なのだ。情報システム、事業戦略などは、どれも極めて重要なものだ。しかし、最終的に事を起こし、結果を出すのは人である。
いろんな会社があるが、ウォルマートほど、本当の家族のように経営されている会社はほかにない。

‐チームを活性化する
ウォルマートは一人一人の存在価値をできる限り正当に評価し、尊重するように努めてきたという点において、ほかに類を見ない企業である。
いろんな会社が従業員を優遇しているが、しかし、メンバーの一人ひとりを尊厳ある存在として扱うことは、ビジネスの成功と職場での満足感の確保にとって非常に重要な意味をもつ。
一緒に働く人を尊厳ある存在として扱うことは、最初からサムウォルトンの事業構想の重要な要素の一つだった。サムは本質的に人間が好きだった。
サムは早い段階で、大きな成功を収めるには、チームメンバー全員がベストの成果を出すように、チーム全体が鼓舞し活性化することが、不可欠であると考えていた。またサムは、彼らを正しく処遇することで、彼らからよりおおきな活力を引き出そうと努力するようになっていった。

サムの事務所の壁の紙
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
「人を現在あるがままの存在として扱えば、その人はこれからも成長することはない。しかし、人をかくあるべき存在、あるいは、かくありえる存在として扱えば、その人はそれに答えて成長していくものである。」

サムは人間を理解し、その可能性を心から信じていた。
「人こそが価値を生み出す」という言葉は、単に聞こえの良いうたい文句として使われるのではなく、ウォルマートの成功を語るうえで、欠かすことのできない重要部分をしめているのだ。
ウォルマートはごく普通の人間の集団である。しかし、お互いを尊重し合い、力を合わせて働く事で、チーム全体として並外れた結果を生み出す集団なのだ。

‐感謝し、認めることの重要性
すべての人は尊重され、尊厳ある存在として扱われるに値するものだ。究極的に、神は私たち人間を神自身の姿をした存在として創造されたからだ。

人が生きていく上において、誰かが自分に配慮し、自分の意見を聞き入れてくれていると感じられていることが、何にも増して必要だ。
だから、人に「ありがとう」と言って感謝の意を表すことの投資効果は無限大である。なぜならば、それに要する費用はゼロであり、人が最も重要だと感じていることは、他者の時間と配慮を自分にむけてもらうことなのだから。

ピータードラッカー リーダーシップにとって最も重要な3つのこと
①物事を単純明快に保つ。自分のやることを必要以上に複雑にしないこと。
②最も大切な二つの言葉は、「お願いします」「ありがとう」である。
③誰が正しいのか?という設問は厳禁。何が正しいのか?を問いかけよ。

これは十分に理解されて実践されるなら、すべての組織において絶大な効果を発揮するはずだ。
組織のメンバーに対する配慮と尊重を通じて、彼らの意欲を高めることこそが、リーダーであるあなたにとって何にも増して重要な仕事なのだから。

他者から受けた賞賛や激励は、その人の心の中に蓄積され、継続的に自身を成長させ、目標を達成し、会社のビジョンに共感し、毎日良い成果を生み出していく上で、積極的な動機付けを与える素地を形成していく。

「人から激励されることを必要しているのは誰かって?呼吸をしている人たち全員だよ」

ベッキーブロディン
「リーダーシップとは権威を振りかざすことではない。人々に勇気や力を与えることである」

‐皆が「何者か」になりたいと思っている
人は誰もが、何らか意味のある貢献をしている存在として、他者から認められたいとおもっている。仕事の内容、誰のために働いているにかかわらず、自分のやっていることが、何らかの意味があると感じられることが重要なのである。
会社の経営者が、あなたに配慮を示し、あなたの存在価値を認めれば、あなたはその会社に対して今まで以上に貢献したいと感じるだろう。
一緒に働く仲間の価値を認めることは、あなた自身にとっても重要な意味を持つ。

‐もっと遠くまで行きたいのなら一緒に進もう
人は自分に好感を持つようになれば、他人についても好感を持つことができる。お互いに好感を持ちあえるようになれば、チームとして一緒に働けるようになり、その結果、期待をはるかに上回る成果を上げることも夢ではない。

アンドリューカーネギー 鉄鋼王
「すべてのことを自分でやり、また、その手柄も独り占めしようとする人は、決して偉大なリーダーにはなり得ない」

‐ 一人ひとりの大切さにちがいなどない
ウォルマートはアソシエイト一人ひとりが皆等しく重要な存在であるといっている。一人一人に役職はあるが優越の差がない。
人日に成果を出してもらうための最善の方法は、彼らを正しく処遇し、彼らに自らの存在の重要性を実感してもらうことである。意味づけを与えることが最高の動機付けとなる。それによって、人は、現在の自分の仕事だけでなく、会社全体や自身のより大きな貢献の可能性などについてもさらに情熱を燃やして考えるようになる。自尊心にプラスの効果を与えるようなほんのちょっとしたことを見つけてやってみるとよい。
あらためて述べるが、これは経営上の小手先のトリックではない。また実行するのは簡単ではない。成功している人はみな実践しているわけでもない。その結果、仕事をしている人々の大半は、自分が感謝され、認められているという感覚を全く得れていないのが悲しい現実である。

‐訊かれる前に答えを用意しておかねばならない「五つの質問」
ウォルマートは、問題に対する回答が常に社内に「あるわけではないという信念がある。
絶えず社外の人を招き、学ぶ機会を求めていた。

例えば、IBMのルーガースナー、GEのジャックウェルチ、P&Gのジョンペッパー、HPのカーリーフィオリーナ、マイクロソフトのスティーブバルマーなど、お越しいただいたことがある。
こうしたリーダーたちから学ぶことは計り知れない。
ソロモン王が言う通り、「鉄が鉄を鍛えるように、人が人を鍛える」

フェデラルエクスプレスの5つの質問
①私に期待されていることはなにか
⇒私は何をしないといけないのか?私の仕事はなにか?業績は何によってはかられるのか?

②私の仕事ぶりはどうなのか
⇒近々のプロジェクトや案件の対応はどうだったのか?仕事ぶりはどうだったか?
アソシエイトたちが、自分の仕事ぶりについて、いいのであれは知りたいのは当然である。期末の評価に驚いているようであれば、上司は本来の務めを果たしていないことになる。本人が年度の途中に何らかの改善を試みる機会もなかったということだ。これは本人にとっても会社にとっても損失である。

③私はどうすればさらに成長できるのか
⇒どうしたら昇進できるのか?もっと大きな責任を担うことができるのか?現状に満足しているひともいるだろうが、そういう人でも少しでも前進したいと思っているものだ。

④私はどこに正義を求めることができるのか
非常に重要な問いかけで、物事が悪い方向に進んだり、自分自身が理不尽な扱いを受けたり、不公正なやり方が通っていると感じたりしたときに、どこに行けばよいのか?これは企業において必ずしも適切に対処できていない。

⑤私がやっていることは重要なのか
アソシエイトたちは、自分は重要な存在であり認めてもらいたいと思っている。今自分がやっている仕事は単純なものではない。こうした想いにこたえるために、ウォルマートでは「お客様がボス」という考え方がある。

組織で仕事をしている人たちは皆、以上の五つのことを問いかけ、答えを聞きたがっている。それにどう答えるかによって彼らの仕事ぶりが左右される。あなたが絶えず、組織のメンバーのためにこれらの五つの答えを用意しておくように心がけていれば、彼らはきっと自ら成果をあげようと努力することだろう。

‐オープンドアポリシー
経営メンバーが注意を払うべきことがらについて、誰からでも自由に問題提起ができるようにしておくことは、働く人々に尊厳を与えるための重要な方法のひとつである。これはオープンドアポリシーという仕組みである。
これがあることで、自由に改善案を提案できるほかに賛同できない場合には意見を表明したり処遇訂正を求めることができる。
オープンドアポリシーを発動するには直属の上司と話がすんでいることが条件で、必要であれば直属の上司から最高責任者まで相談をもっていくことができる。
サムは経営メンバーに対して何事にも素直であってほしいと思っている。
オープンドアであがってくるアソシエイトの意見がすべて正しいわけではないが、だからこそ注意深く耳を傾け、問題をあらゆる側面から把握しようと努めてきた。アソシエイトは、単に誰かに自分の話に耳を傾けてもらいたい、会社が本人を気にかけていることを確認したいだけなのだ。

オープンドアの注意点

第一、リーダーは、場合によっては部下の意見を覆さなければならないことがある。そうでなければ、オープンドアをやっても仕方がない。
だからこそ、彼を雇いなおしてくれないか。
第二に、もし彼が君の言う通りの人物なのであれば、申し本当にそうならばその時は諦めてやめさればいい、二度と雇いなおすことはない。
その後、彼のマネージャーのところに行き、雇いなおすようにいったが、とくに反発はなかった。
以外なことに、彼らはオープンドアが本当に機能するのだなと感心していた。雇いなおしのアソシエイトも次第に心を開き行動を改めるようになった。
ウォルマートではトラック運転手も希望すればCEOに直接あって話をすることができるということが、示された。

‐自らのコミットメントか?義務としての仕事か?
働く人たちは、人間としての企保kん的な尊厳を与えれれば、進んで会社のためにおおきな貢献をする。
しかし、社員が会社に意味のある貢献をできるかどうかを実際に計測する方法はあるのだろうか?

アメリカのギャラップ社 数千人のビジネスパーソン対象の調査
・会社に対して貢献意欲をもっている 29%
(会社との精神的なつながりを感じており情熱をもっている)
・会社に対して貢献意欲を感じない 54%
(仕事に対しするエネルギーはなく舞わrに合わせてこなしている)
・会社への貢献意欲を完全にうしなっている 17%

どんなに立派な会社でも、貢献意欲のない人はいるものだが、ウォルマートのアソシエイトは調査結果よりもずっといいといえる。
リーダーはメンバーの貢献意欲を引き出すために、リーダー自らが意識的に努力をしなければならない。

‐メンバーが貢献意欲を持つようになるには?
組織のメンバーが貢献意欲を持つようになるには、まず、彼らを正しく扱うことから始めなければならない。
それはすなわち、彼らを尊重し尊厳ある存在として扱い、一人の人間として配慮し、組織全体の成功にとってかけがえのない存在であることを伝える。

成功を可能にする環境をつくるには、リーダー自身の責任であることを認識する必要がある。貢献意欲をもつことを、メンバーに任せてはいけない。
メンバー全員がかけがえのない存在であり、チャンスさえ与えれれば、一人一人が組織にとって大きな貢献をする可能性がある、という事実を心から受けれることから始めていただきたい。

‐業績連動賞与とそれ以外のインセンティブの仕組み
サムウォルトンの弟のバドウォルトンは、従業員たちのことを本当に大切に思っている。単に言葉で伝えるだけでは、バドは満足できなかった。従業員の貢献への感謝の気持ちをもっと目に見える形で示したいと考えた。
そして、会社の利益を従業員と分かち合うことが最善の方法だと結論にいたった。その結果、勤続1年以上の従業員には、年間給与の一定の比率に相当する額がその年の利益に応じて分配された。

サムとバドはアソシエイトがウォルマートの(株)を持てるような仕組みをつくりたいと考えるようになった。

ウォルマートでは、(株)以外にも従業員が会社全体の業績の恩恵を受けられるようにしてきた。
そしてこのことがアソシエイトの貢献意欲や参画意識の高揚につながっているのである。

‐自己の能力開発に対する責任
ウォルマートは一人ひとりのアソシエイトの才能を開花するために「ウォルトンインスティテュートというプログラムを立ち上げた。リーダーシップと対人スキルを高めてもらおうという考えからだ。
組織にはメンバーが仕事で必要とする技能を習得することを助けるだけでなく、彼らがリーダーシップを身に着けることを支援する責任がある。
リーダーシップは先天的なもの以外に後天的に身に着けることができると信じている。
ここで、指導ではなく、習得できると表現したのは、
何事においても、人が本質的な理解を深めていくプロセスは、受動的な「指導」ではなく自発的な「習得」の中にのみある、という私の信念に由来する。ウォルマートで提供している多くのトレーニングは、指導ではなく自ら習得(ラーニング)するよう促すことに焦点を当てている。

会社としてできることは、アソシエイトが将来、より大きな責任を担うための準備をすることをお手伝いするだけである。
ウォルマートが成長を続ける限り、より多くのリーダーを育成し続けることが必要不可欠だ。

『成長する機会は皆に確実に開かれているのであって、それに向けて怠りなく準備するかどうかは、一人一人の問題である』

ウォルマートでは、希望するアソシエイトに、学校で勉強する機会を与えたり、幹部メンバーによるメンタリングを提供したり、デールカーネギーのトレーニングコーチの受講を認めたり、人間的な成長をテーマにした評価プログラムを受けてもらっている。

読書を通じてリーダーシップについて学ぶことも、能力開発にとって重要だ。私はいつも、ビジネスや自己啓発に関する良書を買い集めて、手あたり次第読みまくれ!といっている。
年に二回開催される全社ミーティングでは、5000名~6000名に上る出席者全員に、優れた内容を書籍を推薦図書として1冊ずつ配布するのが恒例となっている。
私は学べることをすべてまなんでやろうという姿勢をもつアソシエイトが、最終的には最も大きな成功を収めるのだと思う。
スポンジのように、成功している人を観察し、マネできることを全部吸収することで、良い習慣と悪い習慣も学ぶことができる。

‐リーダーの心構えと態度のもつ影響力

『並みの人間とは、物事が順調で大過なく進んでいる状況のなかでしか、自分の仕事をこなすことができない。対照的に、並外れて優秀な人間というのは、どんな状況に置かれても任務を全うしていくものだ』

あなたは誰かに並外れて優秀な人間だと言われたことがあるだろうか?その経験がある人はその時にどんな気持ちになったかを覚えているだろうか?またあなたは、自分以外の誰かに並外れて優秀だと言ってあげたり、そう感じさせることをしたことがあるだろうか?
あなたも私も、リーダーとして周囲のメンバーの仕事ぶりや成果に対して大きな影響力を行使し得る立場にある。
もっと重要なのは、私たちが彼らの人生そのものに影響を及ぼし絵得る存在だということだ。

例え、五分間の中でも適切なタイミングで激励をすれば、その人の人生を変えることもできる。

一人一人の人生には、数多くの選択肢が用意されている。だから、出会った人々の人生に、自分自身が前向きの影響を及ぼしているのを知ることは、何にも代えがたい大きな喜びではないだろうか。

‐ひとり一人に「自分たちの会社」という意識を植え付けるために
メンバー全員が自分たちの属する組織を「自分たちのもの」だと感じるようにするには、どうしたらいいのか?

答えは簡単である。彼らに「所有者」になる機会を与えたらいいのだ。
①アソシエイト全員をパートナーとして扱い、彼らに感じてもらえるようにする。
②アソシエイトから出された意見やアイデアで、会社全体にとって有益と思われるものは、積極的に実行する。
③利益の一定部分を全員で分かち合う。
④希望に応じてウォルマートの株を手軽に購入できるようようにして、アソシエイトが会社とともに成長していることを実感できるようにする。

■第5章 お客様こそが私たちの「ボス」
お客様の成功に役立つことを第一に考えよ。お客様を第一に考える姿勢を徹底することが、自分自身の成功への一番の近道だ。

ヘンリーフォード
「給料を払ってくれているのは、会社ではない。会社は単に金勘定をしているだけだ。実際に給料を払っているのはお客様である」

どんなビジネスであってもあなたを仕事に駆り立てる原動力は、その仕事がお客様に与える影響の大きさによって決まると言っていい。
ウォルマートでは、重要な戦略を考えるときに「それはお客様にどんな影響を及ぼすか?」ということだ。
始まりはお客様であり終わりもお客様である。

”お客様の存在こそが、ビジネスに携わる根拠である”

そして、価値とサービスの提供において、完璧になることは永遠に難しいけども、そうした高みを目指すことが、意思決定プロセスにおける中心になってきた。成功を導くには組織のすべてのメンバーが情熱的にお客様に向き合うことである。

‐お客様のために尽くすを口先だけでは終わらせない
残念なことに多くの企業のリーダーは口先だけで立派なこと言いながら、お客様のことを一番後回しに平気でしている。事業計画を細部にわたって検討することは、長期的な事業の成功には不可欠だ。
お客様を第一に考えることを抜きにしては、企業や組織としての可能性を最大限に開花させるレベルに到達するのは無理だろうということだ。

サムはすべてのアソシエイトにお客様の代弁者として仕事をするように促し、そうしたことを奨励する企業カルチャーと職場環境を築いてきた。
ことあるごとに、自分たちが最終的に誰のために仕事をしているのか、ということを一人一人が思い起こすようになっている。
ウォルマートでの「ボス」はお客様である。上司でもリーダーでもない。

ジムローン
”多くの人々に奉仕し貢献するものは、自らを偉大な存在へと高めるものである。それにより大きな富、多くの見返り、大いなる満足感、高い知名度、そして深い喜びがもたらされる。”

ウォルマートの商品戦略の背後の考え方
・お客様に焦点を当て、自分が売りたい商品ではなくお客様が求める商品を提供する。
・事業活動にかかわるあらゆるコストを引き下げる。
・商品の販売価格をできる限り低く抑える。
・楽しく、気持ちよく接客をうけられる売り場をつくる。

‐プライベートラベルの商品の導入
私たちのプライベートラベルの商品は、高い品質と低価格に加えて、カラフルなデザインに配慮した魅力的なパッケージで発売されていった。
パッケージを重視する理由は、節約志向の人々がお粗末なパッケージの品物を肩身の狭い想いをしながら買い求めずとも、良い品質の品物を低価格で不通に購入できるのだ、ということを示したいからである。

マイケルコックス
”ウォルマートはアメリカの低所得層の人々に対する史上最大の福音である。限られた生活費を目いっぱいやりくりすることを助け、手の届かなかったはずのものを購入することを可能にしているのだから。”

‐顧客サービスから顧客満足へ
お客様にサービスを提供するということは、自分がお客様になりきるとか、自分と一体化させるということではない。
成功するためには、お客様に満足していただくことに、最大の注意を払わなければならない。お客様に尽くす姿勢がなければ、満足など得られるわけなどない。
ウォルマートでは、お客様に満足していただくことを最大の目標としている。その水準に満たない仕事は一切認められない。
そして、信頼こそがすべての人間関係の基礎である。
多くの企業がついついその重要性を見過ごす傾向にあるからだ。
どのようなビジネスにおいてもお客様ロイヤリティはお金で買えるものではない。それは自ら努力して獲得するしかない。
新規顧客の獲得に多大なお金と時間を費やすのは自由だし、それも必要な仕事だろうが、既存のお客様を維持する方がはるかに大切だし、しかもきわめて少額の費用で足りるのだ。

サムウォルトン
”お客様の期待を超えるように努めなさい。そうすればお客様は何度でも来店する。お客様が望む以上のものを、少しプラスして提供することが肝心だ。”

‐人こそが差別化の原動力
お客様に親しみを感じてもらえる雰囲気をつくる際の主役は、新設で親しみやすいウォルマートのアソシエイトたちである。彼らこそが、ウォルマーチの顧客満足プログラムの核心部分である。
アソシエイトは文字通りウォルマートの顔であり、手であり、声である。

商売に関する基本ポイント
①お客様は自分のほしいものを知っている。まずお客様の声に耳を傾けよう。
②商売はタイミングがすべてである。品切れのない売り場にしよう。
③店員の対応が親切であれば、約半数のお客様は予定外の出費でも厭わない。

親しみやすい接客を可能にする方法は、できるだけ快活な人を選んで採用することである。
ウォルマートでは、採用プロセスにおいてこの点を重視している。
私たちは、意識して、前向きで社交的なタイプの人、つまり私たちが一緒におしゃべりしたり仕事をたりしたいと感じる人を採用するようにしている。
社内では採用検討委員会が設けられており、メンバーは快活で勤勉で回りに配慮に富む時間給のアソシエイトたちが指名される。
ウォルマートの社風に合わない人もおり、そういう人は別の企業を探せばよい。ウォルマートは根っからのアメリカの田舎町の親しみやすさを身上とする会社なのだ。

‐テンフットルール
サムがウォルマート社内で実行してきたことの一つに、「テンフットルール」がある。自分の半径約3メートル以内にお客様がいらした場合には、その時何をしていてもいったん顔を上げ、お客様の目を見てこちらから話しかけるというものだ。これだけでお客様には大いに感激されること間違いなしである。
お客さまによっては、親しいアソシエイトに話をするために来店される。
私たちは、親しみやすい接客を通じて、お客様にくつろいだ気分で買い物を楽しんでいただくように努めている。この点においても他社との違いは明確である。

ニコラス・マーレイ・バトラー(元コロンビア大学 大学総長)
”他者への奉仕を志すビジネスの多くは成功し、利益追求のみを志向するビジネスの多くは失敗する”

‐ウォルマートのマーケティング活動
周到に考え抜かれたマーケティングは、組織の成功にとって欠くことのできない要素である。
マーケティングは、既存顧客および将来の見込み客に示す、企業としての全体像であり、その要素は、
①販売する商品
②お客様が購入する場所
③販売促進のプロモーション活動
④価格戦略
を含んでいる。

現在および将来のお客様が会社の名前を聞いたときに、どんなことを考えてもらいたいだろうか?
どんなイメージを思い描いてもらいたいだろうか?

マーケティングの起点は商品である。商品の見た目、操作方法、ユーザーはどんなひとか、他社商品との違い、想定される購買理由など。

次に考えるのは、いかにしてその商品をお客様に届けるかだ。
お客様が商品を購入する場所をどのように設定するかということである。
店頭か?ネットか?その両方か?

次がプロモーションである。
商品やサービス、企業をどのように広告するか。新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネット、口コミ、ホームパーティ、個別訪問など。

価格戦略
カギを握るのが商品の製造、調達コストである。
ウォルマートでは、この部分のコストを継続的に削減することを通じてお客様により価値を提供し、会社自身に適正なリターンをもたらすことを究極のゴールにしている。

最終的には、以上の四要素を考慮に入れたうえで、会社全体として明快でわかりやすいメッセージを構築しなければならない。
マーケティング活動は、人々の注意を惹きつけるためのものなので、独自性に富み、劇的で時にはユーモアのセンスに溢れるものであることが望ましい。周到に組み立てられたマーケティングプログラムは、企業に強力な競争優位性を付与し、売り上げを大きくする。

‐独自の切り口説得力のあるテーマをかかげる
ウォルマートのマーケティング活動は、これまでも説明したとおり、家庭の毎日の生活ニーズを満たす品々を、親しみやすく楽しさに溢れた雰囲気の中で販売することで、お客様に満足いただけるように設計された店舗、そのものが商品である。
ウォルマートのプロモーションで重要なことは、コスト削減で得たメリットをそのままお客様に還元しているということだ。

ウォルマートのマーケティング活動予算は、常に競合他社より2%ほど低く抑えられている。

1990年代には、マーケティング部門と広告代理店から、テレビコマーシャルには自社のアソシエイトを起用してはどうかという提案を受けた。
選ばれたアソシエイトは見事にモデルの役を果たし成功を果たした。
これにより、お客様の間では、ウォルマートは「ピープルカンパニー」つまり、人が主役の会社であるというイメージが定着した。

-あなたはフライパンよりもずっと大切な存在だから
お客様に満足いただくことは、会社が規則や手続きなどで定める事柄ではない。メンバーの心の中に原理原則として刻み込まれてるべきものであり、そこから自発的に必要な行動をとれるようになっていなければならない。

フライパンを忘れたお客様の話
カートに入りきらないくらいの買い物をしたお客様が、フライパンを手に持っていたが、カートの底のスペースがあいていたのでそこに置いた。購入し、自宅に帰ってみるとフライパンがない。ウォルマートに電話するともう一度売り場まできてもらえないか?とのこと。売り場に行き、店長に勝ったフライパンを伝えると、そのフライパンを手にとって店長からお客様へ差し上げた。客「なぜそこまでしてくれるんですか?落ち度はこちらにあります」店長「それはフライパンよりお客さんが大切だからです」と。

企業カルチャーとして、お客様満足度が刻み込まれている店長にとっては、フライパンを差し上げる権限が自分にあるかどうかなんて、考えもしなかった。このお客様はのちに、地域新聞に手紙を送り、数日後、その手紙が新聞に紹介された。

利益追求を超えたより大きな目的を有する企業こそが、長い目で見て最終的に大きな成功を収めるものだ。この場合、目的とはその企業と従業員が市場の中でどのような具体的かつ明確に差別化された価値を提供するかということである。

■第6章 卓越した成果を生み出す情熱
高い期待を示しつつ、謙虚に過ちを認めてそれを正し、将来を楽観しながらも絶えず自己満足を戒めることで、卓越した成果を生み出すことが可能となる。

‐卓越とは「コレクションオブエラー」である
フライデーモーニングミーティングで、サムはどんなに売り上げがよくてもその喜びとお祝いムードは5分で終了し、反省・改善の会へと移っていった。このミーティングを通じて「コレクションオブエラー」過ちをただすというサムの基本的な考え方に初めて触れることができた。
まだ記憶が新しいうちに、全体を振り返り、過ちを発見し同じことを繰り返さないように対策が講じられるようになった。
まだまだ改善できることがあるのに、内輪で賞賛し合ってばかりいても仕方がない、というサムの考え方が卓越した成果を生み出す情熱の示し方をじかに学んだ。

ディートリッヒボンヘッファー(ドイツの神学者)
強きものの優れた特質は、重大な問題を明らかに示し、それに対して自ら決定を下すことにある。一方弱きものは他社の設定した選択肢のうちで意思決定を強いられるのみである。

‐不可能なことも可能であると信じ込む
不可能という概念は、思考回路をかく乱させることがある。私たちは自分の部下や同僚たちが成し遂げ得ることについて、勝手に限界を設けて考える傾向にある。不可能なことを可能に成し遂げる主体は、リーダーがメンバーに鼓舞することで、実現できる。可能性を信じて強固な信念を抱いたリーダーの存在が、不可能を可能にするとメンバーに信じ込ませるかどうかにかかっている。

‐成功の代償を慎重に見極める
現状を上回る目標を設定し、不可能と考えられていることを実現しようと夢見るのは、素晴らしいことだ。しかしいかにも非現実的で達成しようもないと思われる目標を設定することには、さまざまなリスクもある。
リーダーが自分の独断で目標を設定し、「いいからこの通りやれ」とだけ言ってもメンバーの気持ちを鼓舞する気づかいがなければ、まったくの逆効果である。メンバーが目標設定を自分自身のもだと考える気持ちがなければ、並外れた成果を上げることはほとんど不可能に近い。
目標設定する際には、メンバーたちとj注意深く対話をしながらことを進めることが肝要である。そもそも目標は達成可能なものでなければならないし、それを支えるために必要な経営資源が投入されるようになっていないければならない。
メンバーが非現実的な目標に対して後ろ向きな反応を示した時に、リーダーとして絶対にやってはいけないことは、”彼らの懸念を無視して、一方的やれと言ってしまうことである”
そうなってしまうと、メンバーはとにかく結果を出すために手抜きやごまかしに手を染めるようになる。その結果、事実が捻じ曲げられ、最悪の場合、善良な人々が法律や倫理に反する功を行う羽目になる。
このようなやり方で実現された成長は短命に終わる。そしてその代償は計り知れない。

‐自己満足に陥らない
輝かしい成功をおさめる人のなかで、その後、明白な理由もないのに輝きを失っていく個人や企業をみてきた。彼らの多くが、優秀な従業員、優れた製品、競争優位性の高い市場ポジションなどを抱えたままで失速していったのだ。私には、成功それ自体が大きな問題をうんでいるように思える。
極度の成功を収めることは、それ自体が危険なことなのだ。
山の頂上に達した瞬間、リーダーは細かい心配りを失い、「俺のやったことを見てみろ」と言わんばかりの言動が目立つようになる。エゴをコントロールできなくなると謙虚さが失われ傲慢になる。自分が常に正しいと、根拠もなく信じ込むようになる。そして不適切な意思決定につながる。だから皆があなたを褒めたたえるときこそ、要注意なのだ。あなた自身が非常に危険な状態に置かれているからだ。
継続的な成長と成功を実現する上において、最大の敵は自己満足である。自己満足に陥ると、成功するのがあたりまえだと考え、これからも同じようにうまくいくと勝手に思い込む。成功すればするほど、今まで以上に懸命に努力しなければならないのだ。
改善できることはいくらでもある。理想の追求は、終わりのない道のりなのだ。
ウォルマートがこれだけ大きな業績を上げてこられた理由の一つは、常に最高を目指すことを決して見失わなかったからである。過ちがあればそれを正し、信念と将来への希望を堅持して営業を行い、高い期待を設定し自らを律した結果だ。

サムウォルトン
「心底その仕事を好きになれば、毎日精いっぱいのことをやろうと努力するに違いない。そしてその情熱は、すぐに熱病のように周囲の人々に伝染するのである」

■第7章 何事も実行あるのみ
成功の大きさは、計画し、監督し、最終的にビジネスのすべての段階でやるべきことを実行する能力と正比例する。

組織が成功を収める上で必要な要素は、説得力のあるビジョンを構築し、それを組織全体で共有する必要がある。これがすべての原動力になる。お客様のニーズに対応する商品をつくり、事業をするために必要な資本、資産、そしてもっとも大切な優秀な人材の確保が必要だ。目標達成を目指して着実に遂行してもらうには、周到に練り上げられた経営戦略が必要になる。さらに確固たる価値観や信条に裏付けられた企業カルチャーを継続的に育成し強化していかなくてはならない。
どのような戦略を構想しても、それを具現化する実行力をもつことが決定的に重要になる。

”さまざまな戦略は最大限に実行されて初めて意味をもつ”

‐細部(ディティール)への注意と心配り
さまざまなプログラムや戦略を着実に実行していくことは、企業としてよういなことではない。規模がさらに難しさが増す。さまざまな階層に属し、異なる事業拠点で仕事をしている多数の社内関係者によって、非常に多くの重要な意思決定が行われ、それに基づく行動がとられなければならないからだ。リーダーはこれらすべての進捗をどうやって確かめたらよいのだろうか?
組織が大きくなり、リーダーが組織の上位に位置するようになると、現場の細かいことに関わる時間的余裕がなるなるものだ、という誤った認識が流布している。多くの権限や責任を部下に委譲し、優先順位の高い仕事に多くの時間を割くにつれて、最前線で現場で働く人やお客様とじかに接する機会をなくしてしまうという致命的な過ちを犯す傾向がある。

リーダーがビジネスの細部に注意を払わなくなれば、組織の実行の状態を的確に評価することなどほとんど不可能だ。
参考までに付け加えれな、働く人々のモラルにとって何よりも有害なのは、ビジネスの現場で起きていることが分からなくなってしまったリーダーである。
リーダーが組織の細部の出来事に関与し続けるための第一のカギは、詳細な動向を常に一目で確認できるようにしておくことである。
リーダーが組織の細部の出来事に関与し続けるための第二のカギは、時には自分のデスクを離れて、実際の作業が行われている現場に行ってみることだ。その場にいるメンバーと何時間か一緒に仕事をしてみるのもいい。メンバーと話したりお客様とも会話ができる。
重要なのは、現場の状況を的確に判断するために、公式、非公式、両方のルートからフィードバックを得られるようにしておくことである。

ヘンリーフォード
「失敗とは、物事をより賢明な方法で最初からやり直す好機である」

‐リーダーは現場との接点を失うな
組織の中のコミュニケーションを行うことは至難の業だ。リーダーとしてあなたが伝えようとしたことが、第一線のメンバーに届く前にいくつものフィルターをかけれられてしまわないように、現場との物理的な距離感を徹底的に縮めておく必要がある。
サムウォルトンはMBWA(マネジメント・バイ・ウォーキング・アラウンド)=現場で知り得る情報を重視し、幹部の現場巡回に重きを置く経営手法の信者だ。
意図したことが確かに現場で実行されていることを、確認できなければならない。

‐経営メンバーも現場重視
地区マネージャーだけでなく、サム自身も毎週非常に多くの店舗を自ら訪問している。お店の状態、アソシエイトの仕事ぶり、お客様への接客の様子など、自分のめでじかに確かめる。また、サムは行く先々の店でアソシエイトを激励しているので、アソシエイトから人気があった。

‐インフォーマルな意見に耳を傾ける
優れたリーダーになろうと思うのであれば組織の様々な部門や階層の中で、個人的に意見を聞かせてくれる信頼できる仲間をもつように心がけなければならない。
”あなたが聞きたいことを言ってくれる人、ではなく、本当に聞いておくべきことを言ってくれる仲間”が必要なのだ。
こうしたインフォーマルな人間関係というものは、リーダーにとっても貴重な財産になる。ただしそこで得られた情報は、注意して内密に活用しなければならない。意見を聞かれたアソシエイトたちにとっては、リーダーが彼らの意見を尊重しており、彼らの意見が会社の役に立っているということがわかるので、大いに励みなるはずだ。

‐経営メンバーはアソシエイトがいつでも話せる存在
経営メンバーのオフィスのドアは、誰かとの個別のミーティング以外はいつも開けっ放しである。いつでも普通のアソシエイトと接触できる存在であることを示している。
アイデア、心配事、などはいつでも経営メンバーのオフィスで話すことができる。
アソシエイトの状態をじかに知るためのもう一つの方法は、「オープンドアポリシー」である。オープンドアは単に不平不満の声を上げるための仕組みではない。これを通じてアソシエイトの気持ちや、彼らが会社をよくするために考えていることなど、じかに聞くことができるのである。

以上で分かる通り、ウォルマートは現場の人たちとのコミュニケーションや現場レベルで実際に起きていることを細かく把握することに、多大な労力を費やしている。

‐エブリデーローコストで生産性を改善
ウォルマートで学んだことは、「コストが王様」ということだ。
ウォルマートの人々はコストの削減に全神経を集中しており、その考え方が組織全体にいきわたっている。
国民のために徹底的に節約したやり方で商品を仕入れている。
EDLP(エブリデーロープライス)こそがお客様がウォルマートで買い物をすることに異論はないだろう。そしてこれはEDLC(エブリデーローコスト)なしでは考えられない。
ウォルマートの基本戦略を考えるには生産ループという考え方が必要だ。
事業に要するコストを削減し、商品を値下げし、それによって売り上げが増加すれば、売り上げに対するコストの比率が下がり、さらに売価を下げることができるというもの。
生産ループの考え方は今も健在である。

サムウォルトン
コストを1ドル削減するごとに、我々の競争相手に対する優位性がまた一歩確実に高められる。私たちは常にそうあり続けなくてはならない。

‐不要なコストを排除する
コストを下げ続けるためには、それを最優先課題に据えて、その考え方を企業カルチャーの一部分として組み込んでしまうしかない。
それにはリーダーの普段の努力と規律が求められる。
額の大小に関係なく、すべてのコストについて厳格な説明責任が求められる。あらゆる分野で不必要なコストを排除するのが、ウォルマート流のビジネスの真骨頂だ。
コストを下げるには、絶え間なく継続して取り組む必要があるということだ。さもなければ、コストは知らない間に売り上げ以上のスピードで増大していき、利益を食いつぶしてしまう。

効果的な経費削減は次のとおりである
●すべての費用、コストを徹底管理するという全社的な意識
●一人一人が出費に注意を払う
●経費の使い方ついて一定の規律を維持する
●定期的に業務プロセスは簡素化する
●簡素化できる業務プロセスは簡素化する
●いらない仕事は廃止する
●一つにまとめたほうがい部署は統合する
●システム化、自動化により生産性の改善に努める
●組織全体にわたってコストに対する説明責任を確立する

‐官僚主義の罠
事業が拡大するにしたがって、リーダーの日々の仕事が現場の細かい現実から遠ざかれば遠ざかるほど、道を踏み外す危険が大きくなるのだ。
不要なコストを生み出す要因がいろんな方向から忍び込んでくる。

何年も前のこと、官僚主義についてある連邦議員から聞いたことがある。
彼は、官僚とはゴキブリのようなものだという。
何かを食われるというわけではないが、あちこちに入り込んで物事を台無しにすることこそが一番の問題なのだ。
ウォルマートでは官僚主義を阻止すべく目を光らせている。
経営メンバーは、毎月全部門の経費を細かく調べ上げ、組織変更の提案についても逐一、厳格に査定をおこなう。
全部門の人員配置を見直し、削減できる業務がないかを精査するようにしている。
「業務削減なくしてコスト削減なし」を徹底している。
個人であれ、企業であれ、自ら決意して取り組めば一見不可能と思われることを成し遂げる力を持っていると信じている。そうした大きな成功は何の計らいもなくひとりでに実現するわけではない。
リーダーの立場にあるすべての人々には周到に考案された企業カルチャーが継続的に実践されることで組織全体の業績に絶大な効果を及ぼす、ということを十分に理解してほしいと願うのだ。

■第8章 テクノロジーで変革を加速する
偉大な企業を築くためには、人の役に立ち、組織全体の目標実現を促進するようなさまざまなツールや仕組みを絶えず、積極的に探し求め、その効果を評価し、それらへの投資を進めなければならない。

エイブラハムリンカーン
「6時間以内に1本の大木を切り倒せと言われたら、わたしなら、小野を研ぐのに最初の四時間を費やすだろう」

リーダーには、事業に使用するあらゆる種類の資産から最大限の効果引き出す責任がある。そのような資産には、事業活動を推し進め、企業全体の変革を加速する原動力になりえるものがいくつかある。ウォルマートの場合、テクノロジーとサプライチェーン(物流網)がそれにあたる。
これらの二つに目を向けると、異なる部門間のチームワークのっ大切さや、その結果として得られる高い相乗効果について理解を深めることができる。

まずウォルマート、アソシエイト、企業カルチャーこそが、本書全体を貫くテーマである。サムウォルトンは、コンピュータの導入は人を助けるものでありその逆はないと主張している。だから一人一人のアソシエイトがコンピュータを十分活用して生産性を改善し情報に基づく的確な意思決定ができるようになることを目指していた。
テクノロジーはあくまでも道具にすぎない。重要なのは人である。

テクノロジーから最大の便益を得る4つのポイント
①経営メンバーが直接関与し支援すること。
②テクノロジー部門の責任者に最適の人を選ぶこと
③適切なプロジェクトに投資すること
④投資の回収を確定する方法を決めておくこと

フランシスコベーコン(哲学者・法律家)
「新たなやり方を取り入れようとしないものは、新たな脅威に晒されることを覚悟せよ」

‐経営メンバーの関与
多くの企業では、情報システムの開発は技術屋に丸投げしてるのが普通で、経営メンバーがこうした技術の話に関与することはまずありえなかった。
テクノロジーを理解するのは容易ではないので、経営者としてはその仕事を専門家に任せてしまったほうが、自ら質問をして必死に勉強するよりもはるかに気が楽だ。しかし、こういうやり方をすると専門分野ごとに縦割りで仕事をする傾向が強い技術屋のほうでもますます情報システムの細部にまでこだわるようになり、事業にとっての真のニーズを理解しなくなる。

ウォルマートの情報システム部門では、次の五つの約束を掲げている。
①ビジネスを知ること
②システムを正しく構築すること
③価値を示すこと
④他部門から信頼されること
⑤システムの使い方を正しく教えること

これらの五つの約束の背後にある基本的な考え方は、「商売人として考えよ」というきわめて明快なモットーである。
ウォルマートではこういった考えを基本に据えることで、情報システムで働く人々でも、現場のビジネスニーズや現実に即した仕事ができるのである。

エルベルトハバート(思想家)
普通の人、50人分の仕事を機械が肩代わりするのは可能だが、非凡な才能の持ち主の仕事は、たとえ一人分といえども機械に置き換えることはできない。

‐テクノロジーは敵か味方か?
どのような組織においても、テクノロジーは人々の味方にも敵にもなり得る。ウォルマートにおいては、不断に変化することが企業カルチャーの一部としてアソシエイトに受け入れられているが、それでも所期の変化を実現することは容易ではない。
変化は往々にして、通常の業務に混乱を来すものだし、その影響を受ける人々に不安を与えることもある。
だから、日ごろからメンバーとの間のお互いの信頼関係を醸成し、いかなる変化も会社全体の繁栄につながり、長期的にはここのメンバーのりえきになるのだ。という理解を共有できるような企業カルチャーを築いておくことが重要だ。
リーダーには、すべてのアソシエイトに対して、これから起きる変化を効果的にかつタイムリーな方法で伝える責務がある。
繰り返しになるが、テクノロジーは組織を成功に導くための強力なツールである。しかし、どんなに素晴らしいテクノロジーであっても、一人一人のメンバーに参画意識を持たせることができなければ何事も達成でいないのである。

■第9章 サプライチェーンを刷新する
最も基本的な業務活動の中にこそ、さらなる改善、成長、コスト削減などにつながる大きなチャンスがあるものだ。
当たり前のことを決して見過ごしてはならない。

■第10章 サプライヤーとの信頼関係を構築する
相互の信頼とオープンコミュニケーションに基づき、ビジネスパーソンとの間で、双方に有利なウィンウィンの関係を構築せよ。
そうすれば、成長の可能性を最大限まで引き出せる。

ヘンリーフォード
「何事も出会いがはじまりだ。いつも一緒なら脈がある。そして、一緒に仕事をすりょうになれば成功だ」

EDLPはEDLCなくしてはなりたたない。
ウォルマートでは常にサプライヤー企業と協力しながら、商品の仕入れコストを減らすために知恵をしぼり、実現したコスト削減を売価引き下げあという形でお客様に還元している。
サプライヤーとの関係ははじめからこうではなかった。ウォルマートは、サプライヤー企業との間で全く新しい形のパートナーシップを築いてきたのだ。このことはほかの様々な要因とともにウォルマートの成功ん大きな原動力になった。

‐伝統的な取引関係から信頼関係へ
売り手と買い手の関係は有史以来、敵対的なものと考えれてきたようだ。
売り手はできるだけ、高い値で売ろうとし、買い手は最も低い値で買おうと考える。合意しなければ取引は不成立となる。ウォルマートも草創期では、こういうやり方をしていたが、1980年代後半に変わった。

サムウォルトンが、P&Gの役員とその家族をカヌー旅行に誘った。そしてそこで、互いに脅威(驚異)であると認め合い、余計な摩擦を解消するにはどうしたらよいかと話し合った。解消できればお客様満足度がさらに向上するに違いないという点で、二人の意見が一致した。
しばらくたって、当時のP&Gの会長であるジョンスメイルからサムに直接電話があり、両社のトップ同士で協力が可能か、じっくり話し合いたいとのことだった。
そして、ついに、サムを含む私たち経営メンバーはシンシナティに飛び、数日間滞在し、P&Gのメンバーとともに現状の問題点を洗い出し解決策を協議した。長い議論の結論は、最大の問題点は信頼関係の欠如にいたった。

本質的な問題は、いずれか一方の不誠実ではなく、両社が互いに自社の情報を共有しようとしないことにあったのだ。

‐ジャックウェルチとの会話
P&G訪問からわずか数か月後のことだった。
サムを含む数名が、ジャックウェルチ率いる。ジェネラルエレクトリックの経営幹部とのディナーミーティングに招待された。私たちは食事をともにしながら、両社の取引関係をもっと簡素化しシンプルなものにするにはどうしたらよいか、話し合った。

‐サプライヤーとの関係の抜本的な変革
こうした会社間のミーティングやそれに基づく共同の取り組みは、今日ではそれほど珍しいものではない。しかし1987年においてはきわめて革新的な考え方だった。P&GやGEとの協力の深化が、業務プロセスの簡素化、取引関係の質的向上という点で、大きな成果を上げたことから、すべてのサプライヤーとの関係を見直してみようという考え方にいたったのだ。
お互いの信頼関係の問題さえ片づけば、従来とは全く別の次元の発想やコミュニケーションが生まれることを知った。

ウォルマートとローカル・サプライヤーとの関係
・ウォルマートが販売している主要商品は、アメリカ国内の一万社のサプライヤーから調達している。中には大手メーカーだけでなく、中長期業、個人業者、小規模農園やマイノリティなどが含まれている。

‐全員が勝つまでは誰も勝者ではない
信頼関係を築くうえで必要とされる本質的な要素の中で、繰り返し強調されるべきことが一つある。
それは関係を通して、参加者全員がメリットを享受できるようにすることである。全員が勝つまではだれも勝者ではない。
そして実際、我々も、お客様もサプライヤーもすべてが利益を得て勝利した。

‐サプライヤーとの交渉でEDLCを目指す
サプライヤーからはウォルマートは小売業界の中でも一番厳しいネゴシエーターですと言われるが、最も公正な取引をしてくれるのでよかったと言ってくれる。
ウォルマートではサプライヤーとの約束は必ず守り、商品の代金は必ず期日通りに支払う。サプライヤーから個人的な贈与をもらった社員には辞めてもらうことになっている。また担当者を定期的に変えることで属人的になることを防いでいる。
公正で客観的に仕事ができるようにしており、常に商品取引は公明正大を目指している。

■第11章 成長に終わりはない
組織の持続的な成功の大きさは、成長を追求し続けるひたむきな姿勢に比例する。

ビジネスでは、「最近あたからどんなことをしてもらったか?」というのは普通に使われるが否定的な意味のほうが多い。
逆にこの問いを自分に向けて、「最近私はなにをしてきたか?」と発することは個人や会社の現状を自己診断するきっかけになる。

ウォルマートの6つの成長戦略
①既存店の成長
②新店の開発
③既存店の移設、拡大、改装
④アメリカ国内での同業他社買収
⑤国政的な企業買収
⑥新たな店舗フォーマットの開発

‐既存店の成長
既存店の売り上げをのばすことは、成長を実現するうえで最も重要な要素である。なぜか?
既存店の売り上げが伸びないということは、現在のお客様に提供しているサービスの中味に本質てきな問題があることを意味するからだ。
小売業にとって、既存店の売り上げが伸びているということこそ、事業の健全性を示す最大の指標である。重要なポイントは、既存店の売り上げを伸ばし続けなければ全社の売り上げも減少しビジネスの土台が崩れていくことである。
ウォルマートでは毎週毎週、既存店の売り上げを分析し、勢いが弱ってきている兆候があれば問題をしらべあげる。いつまでも分析をするわけではなく、タスクフォースをつくって問題解決のためのアクションを開始するのだ。

以上、約35000字でした!!!
読まれたかた、お疲れ様です!!

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